【石川県&香川県★連携Vol.3】金沢城と丸亀城 〜前編:名城の石垣をめぐる旅〜
今回のテーマ「城の石垣」で取り上げるのは、日本100名城に選ばれている石川県金沢市にある「金沢城」と、香川県丸亀市にある「丸亀城」です。
加賀百万石を象徴する金沢城は「石垣の博物館」と称され、全国に例がないほど多種多様な石垣が存在します。高さ日本一の石垣を有する香川県の丸亀城は「石垣の名城」として有名で、石垣の上に鎮座する天守は現存十二天守の一つです。特集の前編では公園として整備され、屈指の観光スポットでもある2つの城の石垣の見どころを、後編では現在開催中の秋の石垣ライトアップイベントについてご紹介します。
【石川県&香川県★連携】特集は、観光パートナーシップ協定を締結している石川県と香川県が、さまざまな観光コンテンツをテーマに全10回にわたり両県の魅力を発信します。シリーズ第3弾のテーマは「城の石垣」です。
【石川・金沢城】さまざまな石垣が壮観!石垣の博物館と称される「金沢城」
城の外まわりには野趣あふれる高石垣を配し、藩主の住む御殿や庭園まわりには芸術的なデザイン感覚にあふれる石垣群が築かれました。種類の多さや美しさに加え、石垣づくりの秘伝書や歴史資料、当時の石切り場、石引き道などの環境が今も残ることから、金沢城は「石垣の博物館」と呼ばれています。
<石の加工法>
自然石積み(野面積み):自然石や粗割りした石を組み合わせて積んだ石垣。古い技法で、大きさや形の違う石で乱れた積み方になる。
切石積み(切り込みハギ):整形した石材を隙間なく密着させて積み上げる技法。
粗加工石積み(打ち込みハギ):石の角や面をたたいて加工し、石同士の接合面の隙間を減らして積み上げる技法。
<石の積み方>
布積(ぬのづみ):ある程度高さがそろった石材を用い、横の目地(継ぎ目)を通す。石を同じ形に加工する手間はかかるが、高い技術がなくても積める。
乱積(らんづみ):不揃いの石材を使用するため横目地が通らない。バランスがとりにくいため積み上げに高い技術が要求される。
算木積(さんぎづみ):崩れない石垣を造るために一番重要な角(隅角部)に用いる、横長の石材を短辺と長辺を交互に組み上げる技法。
【石川・金沢城1】左右で積み方が違う「石川門」の石垣
【石川・金沢城2】「菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓」の優美な石垣
三の丸広場に面した石垣は「粗加工石積み」で、裏手の二の丸側は「切石積み」の技法で積まれています。石垣の角の部分に施された、ゆるやかに弧を描く算木積み(さんぎづみ)の稜線も優美です。
藩主の居所である二の丸御殿を守るための砦・武器庫の役割をした建物で、五十間長屋は長さが五十間=約90mもあります。石落しや鉄砲狭間となる格子窓、白塗漆喰壁や海鼠壁で防火構造になっていて、窓の配置が三の丸側は上下の階層で交互になっているのも、外敵への備えなのだそう。
復元された建物は内部の見学もでき、鉛瓦や漆喰壁など、再現に用いられた伝統技法などの展示も行われています。金沢城公園は入園無料ですが、この建物の内部見学は入館料が必要です。
基本情報
菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓・橋爪門
開園時間:9:00~16:30(最終入館16:00)
定休日:年中無休
料金:大人320円、小人100円
※65歳以上は公的な証明書があれば無料。
※五十間長屋+兼六園セット利用券500円
【石川・金沢城3】「土橋門」の石垣にある亀甲石
【石川・金沢城4】「数寄屋敷」の石垣で刻印を見つけよう
【石川・金沢城5】お殿様のプライベートガーデン「玉泉院丸庭園」の石垣
【石川・金沢城6】城内でもっとも古い「自然石積み」を用いた石垣
隣接する鶴の丸広場の「鶴の丸休憩館」には、無料の休憩スペース、金沢城や加賀藩の歴史を紹介するデジタル展示、ボランティアガイドの受付などがあり、茶店で食事やティータイムも楽しめます。菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓・橋爪門を一望できる穴場的なビュースポットです。
基本情報
金沢城公園
住所:石川県金沢市丸の内1-1
電話:076-234-3800(兼六園・金沢城公園管理事務所)
開園時間:3月1日~10月15日 7:00~18:00、10月16日~2月末日 8:00~17:00
※21:00までのライトアップ(夜間開園)の入園:石川門口、鼠多門口、玉泉院丸口から
定休日:無休
料金:入園無料
※菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓・橋爪門の入館は大人320円、小人100円
【香川・丸亀城】築城400年以上の歴史を持つ石垣の名城「丸亀城」
その後、一国一城令により生駒氏は高松城を残して丸亀城を廃城し、領主・藩主も変遷します。正保2年(1645年)に山崎氏が幕府の許可を得て丸亀城を再築しますが、その頃が最も築城技術が発達していた時期で、山崎氏の時に石垣の大半を、京極氏の時に天守や大手一の門などをつくり、現在にも残る姿が完成しました。
【香川・丸亀城1】日本一高い石垣
丸亀城の石垣は築城技術が最も発達した頃につくられ、石垣の総高はおよそ60mもあり、日本一の高さを誇ります。城内には自然石積み(野面積み)、切石積み(切り込みハギ)、粗加工石積み(打ち込みハギ)など、さまざまな石積みでつくられた石垣があり、一度に複数の技法を見ることができます。また、緩やかな勾配から上にいくにつれて、反り返る石垣の優美な曲線は「扇の勾配」と呼ばれ、高い防御性とともに美しさも兼ね備えています。石垣の中には「△」や「田」など刻印も見られます。
【香川・丸亀城2】日本一小さな天守
【香川・丸亀城3】日本一深い井戸
亀山(かめやま)で2番目に高い平場・二の丸にある「二の丸井戸」は日本一深い井戸といわれ、水深は約30m、絵図には深さ三十六間(約65m)とされています。井戸は城を守備する時や日常生活において欠かせない存在です。この井戸には、丸亀城の築城にまつわる怖い逸話も残っていますが、ここでは内緒にしておきますね…(笑)。
基本情報
国指定重要文化財 丸亀城
住所:丸亀市一番丁
電話:0877-22-0331(丸亀市観光協会)
観覧時間:天守9:00~16:30(最終受付16:00)
定休日:無休
料金:天守 大人200円、小・中学生 100円
金沢城と丸亀城 復元整備の様子が見られるのは今だけ
石垣の本格的な修復工事は、全国各地からの募金・寄付金などの支援で現在も進められています。大切な歴史遺産として後世に残すために、復旧の援助・協力をよろしくお願いします!
「お城」特集の後編/【石川県&香川県★連携】特集シリーズを読む
この特集は観光パートナーシップ協定を締結している石川県と香川県が、両県の魅力を発信している全10回のシリーズ企画で、今回は後編で「金沢城と丸亀城 秋の石垣ライトアップイベント」も紹介しています。石川県の「ほっと石川 旅ねっと」と、香川県の「うどん県 旅ネット」で、共通テーマを相互に取材した特集を掲載しているので、ぜひ併せてご覧ください!