【輪島塗とは】復興への希望を紡ぐ~能登で歩む人々にインタビュー~(輪島漆器商工業協同組合 松本 石根さん)
令和6年能登半島地震により、能登地域は大きな被害を受けましたが、被災地ではインフラの復旧が徐々に進み、復興に向けた動きも少しずつですが、着実に進み始めています。
能登で頑張っている方へのインタビューをしながら、能登復興を応援する企画の第2弾。
今回は、石川県輪島市で作られている伝統的工芸品「輪島塗」に携わる松本石根(まつもといわね)さんにお話しをお伺いしました。
輪島塗とは
石川県輪島市の伝統産業で、国の重要無形文化財にも指定されている「輪島塗」。
海外では「japan」とも呼ばれ、日本を代表する漆器の一つ。
「素地が木地であること」「布着せしていること」「地の粉下地であること」この3つの条件を満たして、輪島で制作される漆器が輪島塗と呼ばれています。
非常に堅牢で優美な輪島塗は、傷んでも直すことができ、世代を越えて使うことができます。
輪島塗の歴史
輪島塗の起源は諸説あり、現時点では定かでありません。
室町時代に根来寺(ねごろじ)の僧が伝えたという説や、近くの柳田村に伝わる合鹿碗[ごうろくわん]が原型などという説など、様々あります。
江戸時代前期(1630年)頃には、現在の輪島塗に近い形態になり、江戸時代の中期(1716~1736年)にかけては、現在の工程とほとんど同様になったと言われています。
18世紀ごろからは、講組織による販売が加わり、飛躍的に需要が伸びるとともに品質向上がはかられました。また、北前船によって全国に運ばれ、その名声を広げていきました。
昭和以前は、冠婚葬祭で用いられる堅牢な実用品として用いられることが一般的でしたが、現代では優美で高級、また芸術的な意味合いも持つようになりました。
輪島塗の特徴
輪島塗の特徴は、その堅牢な塗りと加飾の優美さです。
輪島市でしか採れない輪島特産の地の粉(珪藻土の一種)を下地に塗り、塗り上げるまでに20工程以上、総手数では75~124回にも及び、丁寧な手作業で作られます。
そのため非常に強固で、また壊れたとしても修復が可能です。
ノミで彫った面に金箔などを埋め模様を描く「沈金技法」は輪島で完成したといわれ、美しい見た目の秘訣の一つです。
Column
輪島市ってこんなところ
輪島市は、日本を代表する伝統的工芸品のひとつ輪島塗をはじめ、農業や漁業が盛んで、豊かな自然に囲まれた市です。
千年以上の歴史があるとされる輪島朝市には、毎日新鮮な海産物をはじめ、干物や野菜などが並び、常に活気にあふれていました。
現在は各地で出張朝市などを開催し、力強く再興を目指しています。
世界農業遺産「能登の里山里海」を代表する「白米千枚田」は、季節を問わず美しい風景が臨め、また毎年秋~冬にかけては、「あぜのきらめき」と呼ばれるライトアップが好評を博しています。
松本石根さんにインタビューしました
- 輪島市生まれ、塗師屋の家に育ち、幼少期の頃から漆と共に育った松本さん。
- 大学卒業後は、東京で5年程サラリーマンを経たのち、故郷輪島で様々な活動をしたいとのことから帰郷、観光業や漆器業に携わり、現在は輪島漆器組合(輪島塗会館)で勤務されています。
- いしかわ文化観光スペシャルガイドでもあり、施設や観光地の現地案内などを中心に活動されています。
Column
「いしかわ文化観光スペシャルガイド」とは?
石川県は、藩政期以来の永い歴史の中で脈々と受け継がれてきた文化資源が今なお数多く残る、全国でも有数の文化県です。
いしかわ文化観光スペシャルガイドは、歴史的な文化財、伝統工芸、食文化など、石川県が誇るさまざまな文化資源に精通した文化観光のスペシャリストです。
本県の文化の魅力を深く、わかりやすくお伝えします!!
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ご予約はお問合せも可能。詳しくは以下リンクをご確認ください。
Uターンで輪島に戻り、輪島塗に携わるようになったんですね。
松本さんが思う輪島塗の魅力は何でしょうか。
輪島塗の生産地である輪島市は、震災による大規模火災なども相まって、
非常に大きな被害を受けました。
施設や職人さんの状況はいかがでしたか。
- 松本石根さん
- 輪島塗会館は、一部損壊しましたが、4月下旬から午前中のみ営業を再開しています。
目途はまだ立っていませんが、状況を見ながら完全再開を目指しています。
職人さんは、別の場所で避難などされていた方が少しずつ戻ってきていますが、まだまだお仕事が再開できていない方もいます。
復旧・復興には時間がかかりますが、引き続き頑張っていきたいと思います。
Column
人間国宝を数多く輩出する輪島
石川県内在住の人間国宝は10名おり、人口当たりの認定者数(都道府県別)で1位※、かつ工芸技術部門の人数でも全国1位です。
※人間国宝認定者数:1位東京39人 2位京都11人 3位石川10人(2024年9月現在)
そんな工芸王国石川でも、数多く人間国宝を輩出しているのが輪島塗が盛んな輪島市です。
2024年7月には、輪島市在住の西勝廣(にし・かつひろ)さんが人間国宝に認定されることとなり、県内に明るいニュースをもたらしました。
大変な状況ですが、みなさんそれぞれの場所で復旧・復興に向けて尽力されていますね。
- 松本石根さん
- 仮設工房も建設中なので、少しずつですが、歩みを進めています。
ふるさと納税なども間もなく再開しますよ。
能登をはじめ、輪島を応援してくださっている方がたくさんいます。
ぜひメッセージをお願いします。
- 松本石根さん
- 全国の皆様には、発災当時からご支援をいただいており、非常に感謝しています。
宿泊施設が再開し、観光が再び自由にできるようになったら、輪島塗のみならず、能登の様々な魅力を感じて、体験してほしいと思います。
まずは、金沢・加賀が賑わってくれることで、能登にも波及していくと思います。
石川県が全国に誇る輪島塗の歴史を絶やさず、
これからも魅力を発信し続けていってほしいですね。
輪島塗に関する施設
輪島市内で今行ける観光施設
輪島市内で今いける観光施設を紹介します。
なお、輪島市はまだ震災から復旧・復興の途中です。
通常時と営業時間や状況が異なる場合がございます。
最新の営業状況や交通情報をご確認のうえ、住民へのご配慮をどうぞよろしくお願いいたします。
引き続き、輪島で生産された地のものを使いながら、質の高いものを生み出し続けたいと思っています。
また、震災を受けて注目を浴びているという側面もあるので、何か新しいことにも挑戦したいと思っていますね。