和倉温泉で伝統建具の粋を味わう。組子体験と幻想の森へ|石川県・能登
2904ビュー
はじめまして!2022年8月に東京から金沢に移住してきました、ほっと石川旅ねっと体験ライターの椎木と申します。
摩天楼は人を狂わせると言いますが、15年以上の東京生活で失ったものは数知れず、わずかに得たものは手放して、妻子を伴い石川県にやって参りました!外から見ても内から見ても魅力いっぱいの石川県。未だ準観光客のような立場の僕だからこそ見えてくる石川県の姿を忌憚なくお伝えしていきます!
温泉入って酔っ払うその前に!
シンプル&タイムレスな伝統工芸に触れて、必見の幻想的なヒーリングスポットへGO!
今回訪れたのは、言わずとしれた有名温泉「和倉温泉」のある七尾市。金沢市中心部から車で1時間ちょっとで着きます。
「温泉に来たのだから旅館でのんびり過ごしたい…」と常人ならばそう考えるところですが、「記念になるようなちょっとした物があったら…」「せっかくだから温泉旅館一本じゃなくて、観光らしいこともしたいし、キレイな写真も撮りたい…」と思いませんか。そんなあなたにこんな体験旅はどうでしょう。
『和倉じばん館』で伝統の田鶴浜建具「組子」作りをお手軽体験
古き良き日本建築に欠かせない美しい建具。和倉温泉ほど近くの「田鶴浜」という場所は、古くからこの建具で全国に名を馳せてきました。 建具に使われる技法の中で、田鶴浜が他に誇るのが「組子」。組子とはその名の通り、細かく加工した木を釘を一切使わずに組み込んでいく技法で、100種類以上の組み方があるらしいです。
シンプルかつサステナブルな機能美。幾何学模様を成すタイムレスなデザイン。伝統工芸ではありますが、なんだかとても今っぽくて素敵なんです。
その組子が超手軽に体験できる施設『和倉じばん館』が、和倉温泉の中心部にあります。入り口のわくたまくん(和倉温泉のゆるキャラ)が目印です。
中に入ると、組子で作られた雑貨や工芸品がズラリ。今回の体験ではコースター作りに挑戦します!本日の先生、笑顔の優しい浜本さんが迎え入れてくれました。「4歳の子どもでも作れますか?」と聞くと 「大丈夫ですよ!10分くらいで作れちゃいます!」と浜本さん。 畳敷きの小上がりに案内され、早速体験開始です。
組子なので、本当に木を組むだけ!とはいえ、うちの長男にできるか…と内心では不安でしたが(手先の技術というよりも集中力の問題で)、空気を読んだのか、意外にもすぐさま真剣な表情に。
少し難しいところはママに手伝ってもらって…ってやってると、畳の上でウロウロしていた2歳の次男も興味津々になってきました。
結局、我慢しきれずに次男も挑戦することに。イヤイヤ期の次男ですが、これも組子のチカラなんでしょうか。2歳の子どもでもママと一緒なら、ハイこの通り。サクサク進んであっという間にもうすぐ完成です。
本当に10分くらいでできちゃいました!完成した組子のコースターは息子たちも取り合いになるくらい大人気。とても素敵なデザインでもちろん大人が使うのもイイ感じ。
和倉温泉の中心地にあるので、散歩がてら少し空いた時間を狙って体験できます。しかも、記念品として自作の組子を持って帰れるわけです。
最初は子連れはどうだろうと思ったんですが、子どもには程よい難易度で終始楽しそうでした。息子が自分で作ったコースターを大事に握りしめてるのを見て、父も大満足です!わくたま君ともバイバイ!
基本情報
和倉じばん館
住所:石川県七尾市和倉町ヨ-5丙
電話番号;0767-62-1555(和倉温泉観光協会)
定休日:なし
駐車場:なし(事前にお問い合わせください)
《田鶴浜伝統工芸 組子体験》
体験時間:10:00〜15:00の好きな時間帯 ※要事前予約。
体験料金:800円〜
実施期間:通年
痺れるような風格…田鶴浜建具の発祥の寺『東嶺寺』へ
先の和倉じばん館がある中心街から車で約10分弱、田鶴浜建具発祥の寺と言われる『東嶺寺(とうれいじ)』にも足を伸ばしてみました。 建立は慶安3年(約370年前)と、なんだかいつだか分からないくらい歴史の長いお寺です。
かつて修行僧がいた名残で、山門正面には常に柵がされており一見入れないように見えますが、そこで帰らないでください。右に回り込むと回廊の入り口があり、そこから中へと入れます。
山門には立派な仁王像が。ついつい覗きたくなりますよね。寺社仏閣に明るくない方のために付言しますと、そもそもこんな立派な山門がある自体がすごいんです。東嶺寺全体がほとんど建立当初の姿のままで、本堂や山門は市指定文化財に登録されています。指定文化財は本殿内にもたくさんあるそうですよ。
静謐な威厳を感じる参道、山門、本殿。かつての修行僧たちの姿が目に浮かぶようです。こういうシャビーな木造建築が大好きな筆者には垂涎ものです!
加賀藩重臣であった長(ちょう)氏が、菩提寺となる東嶺寺本殿を作る際に、尾張から2人の指物師を招いて障子や欄間などを作らせたのが、田鶴浜建具の起源とのこと。 写真左手に見えるのが、当時のまま現存している本堂扉で、歴史の深さが感じられます。
この技術に惚れた地元のファン(住民)が続々と弟子となって技術を磨き、現代へと引き継がれ今の田鶴浜になっているのですから、なんだかロマンのある話ですね。
修行のために長年使われてきた仏具たち。これぞ経年の美といった佇まいです。
ところで、拝観する日を事前連絡すれば、ご住職の長田さんに寺中案内してもらえます。もちろん無料で。学校の課外学習なども含め訪れる人も増えているようです。東嶺寺だけでなく、田鶴浜、そして七尾にまつわる面白い歴史を聞かせてもらえますが、ここで詳しくは書きません。是非ご自身で確かめてください!
基本情報
本当は内緒にしておきたい…森の中の神秘の池「御手洗池」
東嶺寺からさらに車で5分ほど。 赤倉神社のある大きな園地の一角に「御手洗池」はあります。 なんとここ、環境省の名水百選に選ばれるほどの場所ですが、その名を優に超えるマイナスイオンだだ漏れの秘境でした。
駐車場のほぼ目の前、「赤蔵山 お池」と彫られた巨石の案内に従い、少しだけ階段を下りた先に、御手洗池はあります。車から降りてすぐというのが子連れには嬉しい!
なお、赤蔵神社本殿を含めたこの一帯は「赤蔵山憩いの森」と呼ばれ、ハイキングコースになっています。
この空間の美しさに見惚れる妻子。ちなみにこの日は少し雨がぱらついてましたが、御手洗池は鬱蒼とした森の中にあるため、木々が天然の傘となりほとんど雨に濡れません。むしろ、雨露で濡れた木々の緑が美しい…。
池の水面に木々が反射して、神秘的な空間を演出しています。
奥には座って池を眺めていられる小屋もありますし、ゆっくり軽食をとってもいいかもしれませんね。
苔やら虫やらに夢中の息子たち。こんなにキレイなのになぜか観光客は僕らだけ。穴場中の穴場です。貸し切り状態なので、池のほとりでたくさん写真を撮ってしまいました。
このビロードのような苔をよく見てください。ありがとうございます。これが生い茂っている森の美しさは、言葉で説明し切れません。
そろそろ和倉温泉に戻って温泉に入りたくなってきましたが、「まだここにいたい!」と長男。いいでしょう。たっぷりマイナスイオンを浴びていきましょう。
池を覗き込む。その高い透明度から、たくさんの生き物が生息してるのを観察できます。落ちないように気をつけて!
基本情報
美しい景色の中でのんびり森林浴をしたところで、今回の体験旅はおしまい!
東京だと店や道は人でごった返し、予約とるのも駐車場に車をとめるのもひと苦労ですが、そこはやはり石川県。旅にいらぬ気苦労をせずに済むのが、なんとも良いところです。
旅館でひたすら温泉に浸るのも良いですが、少し外に出て体験&観光の後に入る温泉は極上ですよ!それではまた別の旅で!