スタートはのと鉄道の終着駅、穴水駅から
金沢中心部から車で2時間弱。能登半島東側の中ほどに位置する穴水町は、海沿いをのんびり走るローカル線、のと鉄道の終着駅です。
古くから大陸文化の入口として栄え、鋳物文化や古刹など、往時が偲ばれる歴史スポットが残ります。近年は、「まいもんまつり」に代表されるグルメの町として、冬のカキ料理など、まいもん(うまいもの)のイメージが定着。
そんな穴水の豊富な食材や自然を気に入って移り住む移住者も増え、今回のウルシ染めの体験はUターンされた友禅作家さんが教えてくれます。
まずは穴水駅に立ち寄り、観光パンフレットを入手しましょう。
のと鉄道では時期によりラッピング列車が運行されていて、現在は、作中にのと鉄道も登場したアニメ『花咲くいろは』のキャラクターが描かれている「花咲くいろは4号」が走っています。のと鉄道終点の穴水駅では車両が待機していることが多く、シャッターチャンス。
穴水町物産館『四季彩々』でグッズをゲット!
穴水駅舎に併設して、穴水町物産館『四季彩々』があります。四季彩々の前はバス乗り場になっていて、建物前にはバス待ち客のための木のベンチが並んでいます。
ただ今回のコースはバスではアクセスしにくいため、金沢から車がおすすめ。のと里山海道を走り「越の原IC」または「穴水IC」で降りて、穴水駅には5分ほどで着きます。
四季彩々の入口では地元米や椎茸など、その時期にとれる農産物を販売しています。館内に入ると、能登栗を使ったお菓子や能登の塩、干物などの海産物、珠洲焼や輪島塗などの工芸品をはじめ、能登全域の特産品がずらりと並んでいます。
数ある商品のなかでも、「能登ワイン」が一際目を引きます。穴水の広大な畑で栽培されたワイン専用のブドウで醸造する本格的な日本ワインです。全国にファンも多く、ワイン好きにはぜひおすすめ。
「ここに来ないと買えない、おすすめのみやげがありますか?」とスタッフに尋ねてみたら、いろいろ説明して教えてくれました。「いつでも聞いてくださいね」とやさしい声をいただきました。
「四季彩々のイチオシは相撲界の遠藤関グッズです」とスタッフ。甘いマスクと技巧相撲が女性に人気の遠藤関はここ穴水町出身。応援グッズコーナーでは、スタッフが人気の3品を選んでくれました。左が遠藤関のかわいいイラスト入りの巾着(600円)、真ん中が力士応援タオル(750円)、右がイケメンイラストの豆うちわ(460円)です。
次の人気はのと鉄道グッズ。七尾駅(七尾駅~和倉温泉駅間はJRと供用)と穴水駅を結ぶ鉄道路線ですが、所有はJR西日本のため、のと鉄道は自社で線路を持たない鉄道運営会社です。海沿いや山あいを走る列車の車窓からは、ローカル感満載の沿線景色を楽しめます。三セク鉄道クリアファイル(400円)、観光列車オリジナル定規(300円)、駅名標マグネット(550円)、バス停留所マグネット(600円)、ダイヤグラムの手ぬぐい(1,100円)などが好評だそうです。
四季彩々のこだわりみやげは、「かきの佃煮」(650円)。日本海側最大のカキの養殖産地である能登半島のカキは、小ぶりでも濃厚な味で知られており「能登かき」ブランドとして県内外にその人気が広がっています。通年販売(冷凍)のかきの佃煮は、お酒にもご飯のお供にもぴったり!
ほかにも、なんと珍しい「ぶどう葉茶」がありました!穴水産のワイン用ブドウ、ヤマソーヴィニヨンの葉を100%使ったハーブティです。ぶどう葉茶(各1,296円)は、ワインの産地ならではですね。
四季彩々には、評判のご当地ソフトクリームがあります。その名も「能登ワイン米あめソフトクリーム」(400円)です。伝統的な米あめを製造する地元の横井商店と能登ワインのコラボでできたもので、アルコールは入ってないので子どもから大人まで楽しめます。
基本情報
穴水町物産館 四季彩々(あなみずまちぶっさんかん しきさいさい)
住所:石川県穴水町大町チの41-6
電話番号:0768-52-3333
定休日:なし
営業時間:9:00~17:30
駐車場:36台
苔むした境内と国指定重要文化財の石造五重塔を拝観『明泉寺』
穴水駅から車で約30分、中居湾の海景色を右手に見ながら途中約7kmで右折し山中を走ります。穴水駅から約16kmの地点に『明泉寺』があります。道路上の看板には明千寺と書いてありましたが、明泉寺のある地名が明千寺なのでOK。明泉寺は道路左の山手にあって少し分かりにくいのですが、目印は道路沿いにあるこの六地蔵です。ここを通り過ぎてしまうと1kmほどで富山湾にぶつかります。
石段を上がると観音堂や本堂が見えてきます。明泉寺は飛鳥時代、白雉3年(652)に創始されたと伝わる真言宗の古刹。平安時代初期には真言宗の開祖、弘法大師もこの地で修行したと伝わり、その際に空から降ってきて夜を照らしたという言い伝えの明星石が残ります。鎌倉時代から室町時代にかけては最も隆盛を極め、元亀3年(1572)、上杉謙信の兵火にあうまでは20棟以上の伽藍(がらん)があったといいます。当時の面影を残す『石造五重塔』は、国指定重要文化財として保存されています。
明泉寺の由緒などの説明は、予約をすれば住職が対応してくれるというので、あらかじめ電話で予約をしました。本堂では、寺に受け継がれる紙本着色明泉寺絵図を見ながら、歴史的な背景や、かつての明泉寺は海沿いまで境内が広がっていたこと、境内には石仏や石の水船、石塔など地元の前波石を使った石材文化があること、貴重な木製の仏像も残ることなどを細かく説明してくれました。歴史好きにはとても興味深いことばかりです。
本堂から移動して観音堂に入ると、今度は大きな木製の阿弥陀如来座像が鎮座。ほかにも毘沙門天や薬師如来像、十二神将などがあり、なかには1000年以上前の仏像と考えられる歴史的に貴重なものもあるそうです。中央にある厨子の中に鎮座する本尊は、平安時代初期の木造千手観音立像で石川県指定文化財。落ち着いた眼ざしで慈愛に満ちた表情の本尊は、7年に一度のご開帳だそうです。
木造菩薩の上半身や頭だけになっている釈迦如来など、悠久の歴史を刻んで朽ちた木製の仏像などが並びます。
堂内から見える境内は杉林に囲まれ、無数の石仏や五輪塔が草の中に点在しているのが見えます。写真は、左が地蔵石仏、右が阿弥陀種字板碑で、紙本着色明泉寺絵図にも描かれている古いものだそうです。
境内に唯一残る生き証人のような「石造五重塔」。絵図から察すると、かつては西・東一対で立っていたといい、現在残るのは東塔のみで高さは6.728m。鎌倉時代後期の作とされます。ほかに平安時代の古仏が複数あることから、明泉寺の歴史の深さが偲ばれます。
ちょっと不思議なのですが、明泉寺のすぐそばに「源頼朝の墓」といわれる一角がありました。頼朝の墓とみられるひときわ高い宝篋印塔(ほうきょういんとう)を中心に、たくさんの五輪塔が並びます。頼朝は今、テレビドラマでも話題ですが、住職に尋ねると、この地は北条家にゆかりがあることから政子のつながりで墓があるのでは、とのこと。最近は「頼朝の墓に参りたい」との問合せも多いそうです。
基本情報
明泉寺(みょうせんじ)
住所:石川県穴水町明千寺ル-18-1
電話番号:0768-57-1353
定休日:なし
拝観時間:9:00~17:00
拝観料:300円
駐車場:20台
染色のプロが教える、珍しいウルシ染めの体験『新谷工芸』
明泉寺からは富山湾に向かって進みます。富山湾にぶつかったら右折し、約200m右手のゆるい坂を上ると『新谷工芸』があります。こちらも少々分かりにくいのですが、この「染」と書かれた看板が目印。見のがさないで。
新谷工芸は、京都の染色工房に勤めていた新谷さんが帰省し、40年ほど前に開いたもの。現在はご夫婦ともに誂え着物の制作はもちろん、染色家、デザイナー、創作家として活躍されています。
30年ほど前からは能登の草木を使った草木染め教室を開催。今回体験するのは、奥能登・輪島のウルシを使うウルシ染めの体験です。
能登半島先端にある輪島市で生産される輪島塗は堅牢・優美で、高級漆器としてその名が世界にも知られています。輪島の山間地に植林されているウルシの木を細かく砕いて作るウルシチップを原料にしたウルシ染め。ウルシを使って染めるのは日本でも数少なく、まさに世界にひとつだけのハンカチづくり。わくわくしますね。
体験工房では、まずウルシについての説明があります。ウルシってかぶれるんじゃない?って思っている人、そんな心配はいりません。使用するウルシ廃材は、すでに樹液が出なくなった木を3年寝かせているため、かぶれる成分が抜けているとのこと。また、ウルシの木の断面が真っ黄色なのにも驚きます。媒染液によっては鮮やかな黄色に染めることもできるそうで、ウルシ染めは多彩な発色が魅力であり、絹や木綿、麻にもよく染まる優れものだそうです。
体験では衣服や靴が汚れる可能性があるので、エプロンやサンダルなどの無料貸し出しもしています。気になる方は、予め申し出てくださいね。
体験を始めましょう!スタートは柄選びです。基本の絞りは2種あり、割り箸で止めて幾何学模様を浮かび上がらせる方法と、くしゅくしゅとさせて輪ゴムできつく縛る方法とがあります。いくつか完成例を見せていただけるので、好みの柄を選んでみましょう。
今回選んだのは木綿のハンカチで、方法は、割り箸で止めてつくる幾何学模様です。四角いハンカチをたたんで止めた部分が白く残るのですが、どこがどこだか・・・でも丁寧に止め方や位置を指導していただけるので、とてもスムーズです。止める輪ゴムはかなりきつく巻いた方が白くハッキリ模様が出そうです。
布の種類はほかにもバンダナやストールもあり、麻や綿麻、絹などがあります。
しっかり縛ったらまず水で全体を濡らします。次はウルシの液に浸けて、全体がむらなく染まるようにかき混ぜたり裏返したりしながら常に動かします。時間がきたら水で洗い、再びウルシ液に浸けるのを繰り返します。
水洗いや染めを繰り返して、色が濃くなったところで、ゴムをほどきます。さて、どんな柄に仕上がっているのか、ちゃんと染まっているのか、ドキドキの瞬間!
ヤッター、すごいきれいに模様が出てる!うまくいったみたい。
アイロンをかけてきっちりのばして完成です。いい感じの仕上がり!理想どおりの色と柄になりました。
新谷工芸では、能登に育つ草や木々の葉での草木染めのほか、藍染めもしています。写真の藍染めは、美しいインディゴブルーが印象的ですね。
工房の周囲には草木染めに使用する植物が30種類ほど植えられており、希望すれば案内してくれます。写真は日本在来種のニホンアカネで、根を煮出して液をつくります。ほかにも、ヤシャブシ、コガネバナ、アイ、ヤマモモ、シャリンバイなどがあり、さながら植物園のようです。
新谷さんご夫婦もとても優しくて、また違う染め物体験をしてみたいなと思いました。
基本情報
新谷工芸(しんたにこうげい)
住所:石川県穴水町宇加川ル77-6
電話番号:0768-57-1189
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
営業時間:9:00~17:00(体験スタートは10:00、13:00、15:00) ※所要時間は約2時間
駐車場:3台
体験料金:ウルシ染めハンカチ1,000円~、草木染めハンカチ1,000円~。基本は4名から受付で6歳以上が対象(1~3名の場合は要問合せ)
実施期間:通年営業(月曜休館)
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