国立工芸館の見どころ!金沢の「ポケふた」もここにあり

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2020年秋に東京から石川県金沢市へ移転した国立工芸館。日本で唯一の近現代工芸とデザイン作品を専門に扱う美術館として、展覧会や鑑賞プログラムを通して工芸やデザインの新しい魅力を発信しています。
本記事では国立工芸館の見どころや、子どもに人気のポケモンと出会えるスポット、あわせて訪れたい施設などをご紹介します!

国立工芸館の見どころ!金沢の「ポケふた」もここにあり

国立工芸館とは?

国立工芸館は2020年に東京から石川県金沢市に移転し、近現代工芸とデザイン作品を専門に扱う国立美術館として、陶磁やガラス、漆工、木工、染織、金工、グラフィック・デザインなどの作品4,000点以上を収蔵しています。

まず目をみはるのが、クラシックな西洋風の建物です。国立工芸館は、登録有形文化財建造物である明治期の陸軍施設2棟を移築し、過去に撤去された部分も含めてかつての外観に復元されました。
正面向かって左側にある茶色と白のシックな建物は、1898年に建てられた旧陸軍第九師団司令部庁舎で、もともとは金沢城内に建てられていた施設なんです。
そして向かって右側が、陸軍の将校クラブとして1909年に建てられた金沢偕行社で、緑の窓枠が華やかな印象です。 

なぜ東京から金沢へ移転したの?

国立工芸館は1977年、東京国立近代美術館工芸館として東京・北の丸公園に開館しましたが、地方創生施策の一環として、金沢市の歴史的建造物や文化施設が集まる「兼六園周辺文化の森」に移転し、館名も『国立工芸館』と改めました。 

人間国宝や日本芸術院会員の作品をはじめ、日本の工芸の歴史を語る上で欠かせない美術工芸作品約4100点を所蔵し、大きく3つの展示スペースにて鑑賞できるようになっています。

国立工芸館の見どころ

まるでタイムスリップしたかのような気分になるレトロな国立工芸館。右手側、旧陸軍金沢偕行社の外観のとある箇所に旧陸軍のトレードマークでもある五芒星がありますので、ぜひ探してみてくださいね。
それでは早速、中に入ってみましょう!

3メートル超えの大型作品がお出迎え

エントランスを入って目の前にある中庭に鎮座し来訪者をお出迎えしてくれるのは、国際的に活躍する陶芸家・金子潤さんの3メートルを超える大型作品《無題 13-09-04 》です。金子さんの「ダンゴ」シリーズの一つで、国内の美術館に収蔵されている金子作品としては最大級のサイズだそうです。アメリカを拠点とする金子さんは、巨大な窯でこの作品を制作されたということですね。窯もアメリカンサイズ!
「作品を見て、上部の群青色が雨が多い金沢の空、その空から滴り落ちる雨に見えたんです」

と職員の方がおっしゃっていました。筆者はこの作品を見て、冬に雪から土塀を守るために藁で編んだ「こも」で覆う金沢ならではの『こも掛け』に包まれているように見えました。皆さんは何に見えますか?
通常はガラス越しで鑑賞するスタイルですが、年に一度、開館記念日の10月25日には、こちらの作品を間近で見ることができます。作品の側面には金子さんのサインがあるそうなので、ぜひ探してみたいです!

金子さんの大型作品と同様、常設展示でいつでも見ることができる作品は屋外にもあります。橋本真之さんの《果樹園ー果実の中の木もれ陽、木もれ陽の中の果実》という大型作品で、横幅はなんと約8メートルもあります。硬い銅板製なのに柔らかさを感じられ、今にも動きだして自然と一体化しそうな不思議な造形ですよね。大きな穴と、その間には小さな穴も無数にあり、空洞を覗くと穴から差し込む光がキラキラと映し出されて輝いて見えました。
「雨の日にはしっとりとつやが出て、また違った楽しみ方ができるんですよ」とのことです。天候や時間帯によって見え方が変わるのは、屋外展示ならではの味わいですね。


所蔵作品展で工芸・デザインの魅力を深堀り

国立工芸館では、工芸の魅力に触れることができる様々な展覧会を開いています。筆者が訪れた時期に開催されていたのは「反復と偶然展」(2025年2月24日まで)です。同じ模様、動きを繰り返すことで作り上げられる「反復」と、制作工程での温度や力の加減、歪みなどから生まれた「偶然」、その両方の要素を併せ持つ「反復と偶然」の3セクションに分けて、約130点の工芸やデザイン作品などが紹介されていました。

作品の年代は1870年代~2020年代までと幅広く、竹を花の模様のように繰り返し編んで作り上げた器や、日用品をモチーフに陶土などを高温で焼成しドロッと溶け出したような質感を表現したオブジェなど、規則性のある心地よいデザイン性のものから想像力を掻き立てるものまで様々です。
中でも筆者が気に入ったのは、草間喆雄(くさま・てつお)さんの《The Flow》というファイバーアートです。色鮮やかなレーヨン糸が美しい曲線を描き、立体感を生み出していて、じっと見ていると吸い込まれそうな雰囲気でした。
子どもと一緒に工芸を鑑賞するときには「どの作品が好き?」「何に見えるかな?」「どんなところが気に入った?」と声かけをすると、大人とは違った見方や魅力に気づかせてもらえそうです!

蒔絵の人間国宝・松田権六の仕事場

こちらは、蒔絵の人間国宝で「漆の神様」と呼ばれる金沢市出身の松田権六の仕事場を再現した展示ブースです。東京にあったものをそのまま移設して復元しており、畳や障子、道具類も、実際に権六が使用していたものなんです。
4畳半より少し広い程度の狭い工房ですが、これは、蒔絵の作業中に埃がたたないよう、なるべく動かずに道具類を取り出すためなんだとか。権六が座って作業する姿をイメージしながら見てもらいたい展示です。

3Dで360度作品を楽しめる鑑賞システム

館内には、所蔵作品を2D、3Dの高精細デジタル画像で紹介する「工芸とであう」コーナーがあります。大型の液晶ディスプレイ上の作品をタッチすると、作品の解説や作家について表示されるハイテクな鑑賞システムで、2Dは98点、3Dには5点の作品について知ることができます。
3Dパネルを触ってみると、工芸作品をズームしたり、ぐるりと回転させることができました!展示されているときは工芸品の底や裏側を見ることは叶いませんが、これならどの角度からも、細かな造形や細工まで鑑賞することができます。
電球マークをタッチすると作品の見どころを教えてくれるので、工芸の専門的な知識がなくても、どこに着目すれば楽しめるかが分かります。日本語のほか、英語や中国語簡体字・繁体字、韓国語の多言語表示にも対応しています。

明治期のクラシックな内装も注目

工芸作品と合わせて館内で注目してほしいのが、明治期の建築美です。明治当初の西洋建築の特徴や技法が散りばめられています。
例えばこちら、司令部庁舎1階にある階段は、重厚なケヤキ造りのもので威厳を放っています。


階段フロアにあるシャンデリアは、旧東京国立近代美術館工芸館(旧近衛師団司令部庁舎)のシャンデリアを参考にして再現しているそうです。天井の漆喰レリーフもとてもおしゃれです!

普段は入ることができませんが、偕行社の2階にある多目的室の天井の格子柄は、当時のものを復元していて味わい深いです。ワークショップや作家とのトークセッションなどのイベント時に使用される部屋なので、ぜひ公式サイトでチェックしてみてくださいね。兼六園周辺文化の森等活性化推進実行委員会が行っているレトロ建築見学会でも、月2回内部を見ることができます。

オリジナル商品が手に入るミュージアムショップ

お土産も気になりますよね!館内のミュージアムショップには、器やグラスをはじめ、開催中の展覧会に合わせた商品など様々なアイテムが並びます。収蔵する作品の一つ、《十二の鷹》(重要文化財)のオブジェやボールペンは特に人気だそう。
私のイチオシは、国立工芸館オリジナル米蜜ビスケットです。金沢で一番古い飴屋・俵屋のじろあめを使った自然派のビスケットで、県内の菓子メーカー・北陸製菓が製造しているものなんです。小さなお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで幅広い世代に愛されている県民自慢のお菓子なので、自信をもってお勧めしますよ!

国立工芸館の観覧料・所要時間

開館時間:9:30-17:30(入館は閉館の30分前まで)

休館日:月曜日(祝休日の場合は開館し、翌平日休館)、展示替期間、年末年始

観覧料:展覧会によって異なる 
※1階ミュージアムショップとアートライブラリは無料
※アートライブラリは開館日の平日13:00~17:00
所要時間:1~1.5時間

国立工芸館へのアクセス・駐車場

【アクセス(公共)】  
北陸鉄道路線バス「出羽町」バス停から徒歩約5分
北陸鉄道路線バス「広坂・21世紀美術館」バス停から徒歩7~9分 


【アクセス(車)】
金沢駅から約10分
金沢西ICまたは金沢森本ICから20分~30分

【駐車場】

約230台(文化施設共用駐車場)・無料


国立工芸館横の駐車場には、金沢市の公共レンタサイクル「まちのり」のサイクルポートも設置されています。自転車に乗って金沢の街並みを爽快に巡るのもいいですね!

金沢のポケふた「ミロカロス」

ところで皆さん、全国各地にある「ポケふた」ってご存じですか?

実は国立工芸館の敷地内には、石川県内で唯一のポケふたがあるんです!「ポケふた」とは、ポケモンの絵が描かれたマンホール蓋のことで、もぐらポケモンの「ディグダ」が掘った穴の跡に、その「しるし」として誰かが絵を描いているんだとか。
金沢のポケふたには「ミロカロス」というポケモンと、さまざまな工芸作品をイメージしたデザインが描かれています。工芸王国・石川にピッタリな美しいデザインです!

なぜミロカロス?

ミロカロスは、最も美しいといわれているポケモンなんです。ポケモンセンターカナザワにも大きなミロカロスがいるんですよ!歴史ある伝統美を大切に引き継いでいる金沢にピッタリのポケモンかもしれませんね。


©Pokémon. ©Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。

周辺の美術館・博物館

国立工芸館周辺には、おすすめの美術館や博物館が徒歩圏内であります。国立工芸館では、各周辺施設の主催展覧会入場券半券の提示で割引料金となる展覧会もあるので、ぜひお得に楽しんでほしいです。割引対象となる施設や料金については国立工芸館公式サイトでご確認ください。

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歴史と工芸のまち・金沢を味わえる自慢のスポット

金沢城や兼六園などの観光地とほど近い場所にあり、歴史と工芸のまち・金沢の魅力を存分に楽しむことができる国立工芸館。明治期の外観に合わせて、モダンなデザインの着物を着て訪れるのもいいですね!私も次回は着物姿でゆったりと鑑賞してみたいと思います。



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