2024年4月オープンの加賀依緑園!昭和天皇が使用した貴賓室や宿泊した部屋などを見学
2024年4月13日、加賀市山中温泉に新たな観光スポット「加賀依緑園」がオープンしました。かつて山中温泉を代表する老舗旅館「よしのや」の第ニ別荘として、昭和天皇ら皇族や政財界人、文人など多くの人々に親しまれていた「旧よしのや依緑園別荘」が、食と工芸を通じて山中温泉の魅力を発信する新しい場所として生まれ変わりました。
今回はそんな 「加賀依緑園」の見どころを紹介します!
加賀依緑園とは?
加賀依緑園は、創業800年の山中温泉を代表する老舗旅館「よしのや」の第ニ別荘だった「旧よしのや依緑園別荘」をリニューアルした施設です。
1947年10月に昭和天皇が滞在したほか、1963年には吉田茂元首相が、池田勇人の後継者に佐藤栄作を指名した「山中会議」が開かれた場所でもあります。他にも、戦前戦後に渡り、皇族や政治家、川端康成、今東光、山本周五郎、吉川英治などの作家たちも滞在しました。
ちなみに依緑園の名称の由来は、書家の日下部鳴鶴が1885年に宿泊した際に、杜甫(とほ)の漢詩「名園緑水に依る」にちなんで命名されました。
目の前に広がる庭園が眺められるラウンジ
本館1Fのラウンジには、加賀依緑園が800年にわたり歩んできた歴史に関する貴重な資料が展示されており、皇族関係者や文人など、著名な宿泊者の紹介やエピソードも見ることができます。
また、ラウンジからは、開館当初の遠州流庭園の考えを受け継いだ美しい庭園を一望でき、敷地の傾斜を活かした水の流れが、どの角度からでも楽しめるようにリニューアルされています。腰を落ち着かせ、四季折々の風景を感じながら、ゆったりとした時間を過ごすことができる、特別な空間です。
昭和天皇がお食事に使用したとされる食器類と当時の献立
昭和天皇が御宿泊時に使用したとされる食器類と献立も展示されています。
戦後直後でありながらも、当時の依緑園では加賀の名品を取り揃えておもてなしをしたそうです。
献立の内容を拝見すると「スープ ポタージュ」や「ホワイトブレッド」など、今では馴染みのあるメニューが記されておりますが、時代の背景を考えると食材の確保にはかなり苦労されたことでしょう。
金唐革紙の歴史とその技術に触れる展示室
展示室では「金唐革紙(きんからかわかみ)」を中心とした展示がされています。「金唐革紙」は、十七世紀にオランダとの貿易によって輸入された革製品から着想を得て、日本で生まれた擬革紙です。中世ヨーロッパでは、王侯貴族の館の壁などには、金や銀を箔押しした皮革を壁紙として使われいたそうです。
1873年のウィーン万国博覧会に、金唐革紙を出展したことで欧米で人気が高まり、明治政府印刷局で製造を行い盛んに輸出されました。国内でも洋風建築の高級壁紙として利用されましたが、昭和に入ると急速に需要が減少し、その技術は衰退し幻の工芸品となってしまいました。
昭和末期に、明治時代や大正時代に建てられた歴史的建造物の修復の必要となり、金唐紙研究所(代表・上田尚氏)が復元に成功し、一度失われた「金唐革紙」から、あらためて『蘇った』という意味を込めて「金唐紙」と呼ぶようになりました。
ぜひその技術に触れてみてはいかがでしょうか。
昭和天皇が使用された貴賓室「菊の間・桐の間」
かつて貴賓室と呼ばれていたこれらの部屋は、大正~昭和初期の建築を移設したもので、近代西洋建築の影響が色濃く残っています。展示室で拝見した「金唐革紙」が、壁に施され目を惹きます。菊の間には当時の壁紙が今も残っており、桐の間では「金唐紙」が壁に施されており、美しさと気品さを放っています。
また菊の間には、昭和天皇が桐の間をご奏上室(謁見の間)としてご利用された際、実際に座られていたソファを展示されています。桐の間には、御寝具など実際にご使用された品々が展示されており、どちらも大変貴重なものばかりです。
昭和天皇が宿泊されたお部屋「御殿(御幸の間)」
鮮やかな群青色の壁が印象的な「御殿(御幸の間)」では、上を見上げると井波彫刻中興の祖・大島五雲による躍動感あふれる欄間彫刻があり、その精緻な彫刻に思わず目を奪われます。また、このお部屋は加賀市出身の宮大工・天日仁太郎の手によるもので、随所に彼の卓越した技術と、作り手たちの想いが込められています。
また「御殿」では、山中温泉の老舗店「御菓子調進所 山海堂(さんかいどう)」の和菓子と山中塗の器でお抹茶を楽しめます。
四季折々に美しい表情を見せる庭園の景観を眺めながら、静かで贅沢なひとときを楽しむことができます。
※椅子は喫茶ご利用以外の方もご自由にお座りいただけます!
川端康成が長期滞在していた「花月の棟」
「花月の棟」には、小説家の川端康成が執筆のために長期間滞在した場所で、彼にまつわる貴重な記録やエピソードが数多く残されています。
川端康成が過ごしたこの特別な部屋では、月替わりで作家の個展を開催。どの作品に出会えるのかは訪れたときのお楽しみ。
離れにある「唐船の棟・茶室」もぜひ御覧ください!
「唐船の間」では、金沢東山にある工芸ギャラリー「縁煌-enishira-」のプロデュースにより、北陸3県の若手作家たちの作品が常設展示・販売されています。
九谷焼やつまみ細工、金工、漆芸、金蒔絵アクセサリー、水引など、独自の個性が光る作品がずらりと並びます。
また、かつて浴室だった場所を改修した「茶室」も魅力的です。京都市の裏千家家元邸内にある「又隠」を参照したデザインで、屋根の一部にはこけら葺きが用いられ、細部にまでこだわりが感じられる空間となっています。
最後に
いかがだったでしょうか。昭和天皇や川端康成など、多くの著名人が訪れた歴史的な場所であり、美しい金唐革紙の装飾、皇族の滞在記録など貴重な文化財や資料も大切に保存されています。また、遠州流庭園の美しい景観や、地元作家による九谷焼などの工芸品の展示・販売も見どころです。
四季折々の自然と歴史に囲まれた加賀依緑園で、ゆったりとした贅沢なひとときをぜひお過ごしください!
基本情報
加賀依緑園
住所 〒922-0129 石川県加賀市加賀市山中温泉南町ロ87番地1
電話番号:076-71-2683
営業時間:10時00分〜18時00分
定休日:木曜日(祝日の場合は営業)
料金:一般600円(税込)/団体(20名様以上)490円(税込)
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