加賀棒茶とは?ほうじ茶との違いを丸八製茶場に聞いてみた!
石川県のお茶、といえば「加賀棒茶」。金沢で生まれ、古くから親しまれてきたほうじ茶です。
一般的なほうじ茶とどこが違うのか?加賀市で「加賀棒茶」を製造する丸八製茶場にお邪魔して、そのヒミツを探ってきました!
約120年前から愛されてきた加賀棒茶
『加賀茶業の流れ』(米沢喜六著)という文献によれば、明治35(1902)年頃に金沢市の林家新兵衛が開発したお茶が現在の加賀棒茶の始まりだそう。その特徴は、茶の「茎」を使っていること。(出典:石川県茶商工業協同組合)
そもそもほうじ茶というのは一般的に、煎茶などの緑茶を焙煎して作るお茶。
全国にはさまざまなほうじ茶があり、葉の部分を使ったお茶もあれば、煎った豆を入れたお茶、発酵させて独特の風味をつけたお茶など、地域ごとに全く異なるという奥深さ…。
でも、茎の部分だけを使うほうじ茶は全国的にも珍しく、加賀棒茶は石川県独特のお茶として地域団体商標に登録されています。
石川で「お番茶」とも言われ、日常的に親しまれてきた加賀棒茶。
いったいどんなお茶なのでしょう?
加賀市にある丸八製茶場へ
JR動橋(いぶりはし)駅から徒歩10分ほどの場所にある、丸八製茶場の本社と、直営店です。
工場が併設されているので、焙煎の時間帯はあたり一面、甘〜いほうじ茶の香りに包まれます。
私たちが訪れたときも、ちょうど焙煎中!中に入る前から幸せな気持ちに!
大きな生花が出迎えてくれるエントランスの先には、土壁でほっこりとする優しい空間が。
「実生(みしょう)」と名付けられたお店には、加賀棒茶のほか、季節限定のほうじ茶や、全国から厳選して取り寄せた煎茶や玉露、抹茶など、さまざまなお茶が並んでいます。
ギャラリーや喫茶もあるのですが、現在リニューアル工事中(4月6日オープン予定)。
若いスタッフが中心となって構想を練っており、新しいお茶の楽しみ方を提案するカフェになるとのこと。開店が待ち遠しいですね。
季節を楽しむほうじ茶って?
中でも目を引いたのは、ほうじ茶で旬を楽しむというコンセプトの「焙茶noma(ほうじちゃノマ)」シリーズです。厳選した品種と焙煎技術で、その時季に飲んでいただきたい味わいを表現し、年に4回、季節ごと期間限定で販売しています。
茶葉だけではなく、パッケージのデザインも毎回変えているんですって。お客さんの声を取り入れ、ほうじ茶の楽しみ方を一緒に広げていこうという、挑戦的かつ自由なほうじ茶。味わいも香りも時季ごとで違うため、発売を心待ちにしているお客さんも多いのだとか。
この冬に提案したのは、宮崎県産の「釜炒り茶」のほうじ茶です。
一般的な日本茶は、摘み取った後に蒸気で茶の葉を蒸しますが、九州では釜で炒ることで酸化発酵を止めるんだそう。
そのため、「釜香(かまか)」と呼ばれる独特の風味があり、豊かな香ばしさが生まれるということなんです。
中国式なので、海外の交流拠点でもあった九州らしさが際立ったお茶と言えるかもしれませんね。
釜炒り茶は葉を揉み込む工程もないため、一般的な煎茶のように長細い形状ではなく、クルクルと少し丸まった葉であることも特徴。その茶葉の風味を生かしながら、絶妙な匙加減で焙煎することで、どこにもない一風変わったほうじ茶に仕上がるのです。
購入して家で淹れてみたところ、確かに今まで飲んだことのないほうじ茶!
清々しい香りで、ふくよかな甘みの中にもきりっとした表情があるお茶でした♡
加賀棒茶について聞いてみた!
1863年に創業した茶業を代々受け継ぎ160年、チャレンジ精神あふれる丸八製茶場。
代表取締役を務める丸谷誠慶(まるや まさちか)さんに、加賀棒茶とほうじ茶の違いについて聞いてみました。
丸谷さんは6代目として、金沢や東京のお店も率いていらっしゃいます。
- 地元ライター
- 加賀棒茶はほうじ茶と何が違うんですか?
- 丸谷誠慶さん
- 加賀棒茶はほうじ茶のひとつです。明治・大正時代の日本は緑茶の輸出が盛んで、石川県でも茶がたくさん栽培されていました。葉っぱの部分だけを緑茶にするので、茎が大量に余ってしまいもったいないということで、捨てていた茎を集めて焙煎しお茶にしたのが、加賀棒茶の始まりなんです。ほうじ茶は全国にいろいろありますが、茎を使うというのが加賀棒茶の大きな特徴です。
- 地元ライター
- 茎のほうじ茶、つまり棒茶が石川県全体に広がったんですね。
- 丸谷誠慶さん
- そうなんです。ただ同然で原料が手に入るので安いですし、茎は苦味や渋みが少なく、旨味成分といわれるアミノ酸が多いので、焙煎すると香ばしくて美味しいお茶になったんです。それで、気兼ねなく飲める家庭用のお茶として普及しました。現在は、日本国内で栽培された茶の茎を石川県内で焙煎したものを「加賀棒茶」としています。
昭和天皇が愛した「献上加賀棒茶」
安価な普段使いのお茶として定着していた棒茶ですが、玉露にも並ぶ最高級のお茶にしようと研究して完成したのが、この「献上加賀棒茶」です。
焙煎が浅いため、少し緑味がかった茶葉。なんとも言えない芳ばしい香りが立ち上がります。
1983年、昭和天皇が加賀温泉にご宿泊された際、最高のほうじ茶をお出しするため、先代が全国から茶葉を取り寄せて試行錯誤。鹿児島の一番摘みの茶の茎で作ったほうじ茶を「献上加賀棒茶」としてお届けしたところ、昭和天皇がお気に召されてお持ち帰りになり、加賀棒茶が全国に知られるようになりました。
つまり、丸八製茶場の、それまでのほうじ茶の概念を変える高品質化へのチャレンジが、現在の加賀棒茶の人気を生み出したとも言えるのです。
品質にこだわり、丁寧に作っている様子を見てもらいたいと、丸八製茶場では工場見学を行っています(現在リニューアル中、春から再開)。
加賀棒茶といっても、それぞれのメーカーで製法は大きく異なります。
丸八製茶場が得意とするのは、ごくごく浅い焙煎です。
火入れのムラが出やすいため、1日のうちでも変化する気温や湿度を確認しながら、火加減やスピードを調整していきます。
強く火入れをすれば品質は安定しますが、浅炒りの良さは、茶葉そのものの香りや味わいが消えないこと。
品質がよく個性豊かなほうじ茶を提供するために、丁寧に焙煎する職人技を間近で見ることができます。
ほうじ茶道が体験できる、丸八製茶場「実生」
さて、それでは加賀棒茶を購入&味わえるお店をご紹介します。まずは、最初にご紹介した「実生」から。
丸八製茶場本社・工場に併設されているお店は、落ち着いた空間でゆっくりと買い物をすることができます。
スタッフごとにおすすめの飲み方があるそうで、会話の中で、ほうじ茶の粋な楽しみ方を教えてくれるかもしれません。
また、お店に隣接する茶室は、7月以降に利用再開予定とのこと。
5年ほど前に建てられた「双嶽軒(そうがくけん)」はほうじ茶を楽しむための空間で、目の前でスタッフが茶葉を焙煎し、焙煎前後のお茶の違いをお客様に味わっていただけるラボと茶室で構成されています。
茶室の壁にはほうじ茶が練り込まれており、高い天井が気持ちのよい空間。椅子とテーブルで気軽に茶事(ちゃごと)と呼ばれる焙じ茶のコースを楽しめます。
基本情報
丸八製茶場「実生(みしょう)」
【住所】石川県加賀市動橋町タ1-8
【電話番号】0761-74-2425
【営業時間】10時〜17時
【定休日】水曜(祝日の場合は木曜休業)
【駐車場】あり
※リニューアルオープンは2024年4月6日(土)の予定
試飲やテイクアウトのサービスも!丸八製茶場「金沢百番街店」
続いては、丸八製茶場の金沢のお店。
JR金沢駅の改札口から程近い場所とあって、急ぎのお客さんでもスムーズに購入できるような店構えになっています。
こちらのお店では、加賀棒茶を飲んだことがない方にも試してもらえるよう、テイクアウトドリンクを販売しています。
温かい献上加賀棒茶のほか、スタッフおすすめのお茶を提供。
季節によってメニューが変わることもあるそうです。
基本情報
丸八製茶場「金沢百番街店」
【住所】石川県金沢市木ノ新保町1-1 金沢百番街「あんと」内
【電話番号】076-222-6950
【営業時間】8時30分〜20時(テイクアウト時間は10時〜16時)
【定休日】テナントに準ずる
絶品の加賀棒茶ぷりんを提供する「かがの湯ぷりん」
もうひとつ、加賀棒茶を使ったスイーツを提供しているお店もご紹介しちゃいます!
JR加賀温泉駅前にある「かがの湯ぷりん」。
地元の農家や生産者と一緒に加賀を盛り上げていきたいという思いで、2019年にオープンしたプリン専門店です。
お目当ての「加賀棒茶ぷりん」は、丸八製茶場の加賀棒茶をふんだんに使っていて、芳ばしい香りが口いっぱいに広がります。
カラメルとプリンを混ぜながら食べると、加賀棒茶の芳ばしさとカラメルの苦さが溶け合って、もうたまりません♡
まさしく大人の味!リピート必須の絶品プリン!
お店の前にはベンチもあり、その場で食べられます。湯桶に入って出されるプリンは、湯のまち加賀の名物。
フォトスポットとしても人気です。
そのほか県内には、加賀棒茶を使ったいろんなスイーツがあちこちにありますよ。
お店ごとに異なる、さまざまな味わいの加賀棒茶。お茶にスイーツに、ぜひ飲み&食べ比べて楽しんでくださいね。