兼六園の見どころや見頃などを解説!
日本三名園の一つ「兼六園(けんろくえん)」は、「お庭の国宝」といわれる国の特別名勝に指定されている大名庭園です。
四季折々の美しい景観が国内外の人々を魅了。園内の見どころや、お花見やライトアップ、無料開園の情報などもご紹介します。
六勝を備えた天下の名園「兼六園」
金沢市の中心部、金沢城公園に隣接する「兼六園」は、歴代の加賀藩主・前田家によって長い歳月をかけて形づくられた、江戸時代の代表的な大名庭園。水戸の偕楽園(かいらくえん)、岡山の後楽園(こうらくえん)と共に日本三名園に数えられています。
兼六園の名称は、優れた景観の代名詞「六勝(ろくしょう)」に由来します。六勝とは、宏大(こうだい)・幽邃(ゆうすい)・人力(じんりょく)・蒼古(そうこ)・水泉(すいせん)・眺望(ちょうぼう)のこと。宋時代の書物『洛陽(らくよう)名園記』に、相反する六つの景観(六勝)を兼ね備えているのは「湖園」だけと記されていますが、まさに金沢の「兼六園」は六勝を兼ね備えた庭園であることから名付けられました。
池泉回遊式の広大な園内は、大きな池、築山(つきやま)、御亭(おちん)や茶屋が点在し、それらに立ち寄りながら遊覧できるようになっています。そして園内を流れる曲水にはいくつもの橋が架かり、多彩な樹木や苔の緑、春の桜、初夏のカキツバタ、秋の紅葉、冬の雪吊りなど、四季折々の美しさが訪れる人を魅了します。
多くの県民や全国から訪れる観光客に親しまれ、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン(ミシュラン観光版)』で最高ランクの3つ星を獲得したことで、海外からの観光客にも人気があります。取材に訪れた3月中旬はちょうど梅林の梅が花盛り。園内の各所で着物姿の女性やカップル、欧米からの旅行者の姿もたくさん見かけました。
広い園内は園内MAPを参考に! ガイドツアーもおすすめ!
兼六園には七つの出入口(料金所)があり、桂坂口、桜ヶ岡口、上坂口、小立野口、随身坂口、真弓坂口、蓮池門口のどこからでも入園・退園できます。金沢城公園、金沢21世紀美術館、本多の森にある美術館・博物館、ひがし茶屋街なども観光するなら、最寄りの出入口をSTART・GOALとして利用すると便利です。
写真左は金沢城・石川門の目の前にある「桂坂口」で、兼六園&金沢城公園のダブル観光に便利な出入口。写真右の「蓮池門口」は、桂坂口との間に茶店通りがあるので、園内散策の前後に茶店で食事・お茶をするのにも便利な出入口。
敷地は約11.4万平方メートルもあるので、漫然と歩くよりも出入口の料金所で渡されるパンフレットを参考におすすめコースを巡るほか、「兼六園めぐりガイドツアー」に参加したり、観光ボランティアガイド「まいどさん」に案内を依頼するのもおすすめ!
ここからは、ぜひ見ておきたい園内の名所を「桂坂口」から入園するコースを時計回りでご紹介します!
《おすすめスポット》
◆霞ヶ池(かすみがいけ)
兼六園のほぼ中心部に位置する、園内でもっとも大きな池。周辺には徽軫灯籠、虹橋、唐崎松、栄螺山や銘石、植木が配されています。池の中に浮かぶ蓬莱島は、形が亀に似ていることから亀甲島とも呼ばれています。
◆徽軫灯籠(ことじとうろう)
兼六園のシンボルとして有名な灯籠。名前の由来は、琴の糸を支える琴柱に似ているためと伝わります。二股の脚は元々同じ長さでしたが、何かの原因で折れてしまい、石の上に片脚を乗せてバランスを保っています。手前に架かる虹橋と傍らのモミジが三位一体となった景観はフォトジェニックで、多くの人がここで記念撮影をしています。
◆唐崎松(からさきのまつ)
兼六園の中でもっとも枝ぶりが見事な樹木です。13代当主・前田斉泰(なりやす)が近江八景の一つ、琵琶湖畔の唐崎松から種子を取り寄せて育てた黒松です。霞ヶ池にせり出すように枝を伸ばし、水面に影を落とす姿も美しく、特に金沢の冬の風物詩となっている雪から枝を守るために「雪吊り」が施された時期は美しく、円錐型のシルエットが趣深い風情を紡ぎ出します。
◆雁行橋(がんこうばし)
11枚の赤戸室石(あかとむろいし)を使用し、雁が夕空に列をなして飛んでいく様をかたどった橋。石の一枚一枚が亀の甲の形をしていることから「亀甲橋」ともいわれ、この橋を渡ると長生きするとされてきたそう。残念ながら、現在は石の磨耗が著しく通行できなくなっています。
◆根上松(ねあがりのまつ)
高さ約15mの黒松で、大小40数本もの根が地上2mにまでせり上がった迫力の奇観が見どころ。13代当主・前田斉泰(なりやす)が土を盛り上げて若松を植え、成長後に土を除いて根を露にしたものだと伝わります。
◆花見橋(はなみばし)と曲水
「花見橋」の名は木橋から見る季節ごとの花の眺めが素晴らしいことから。緩やかに流れる曲水に沿って桜、カキツバタ、サツキ、ツツジなどが咲き誇ります。特に5月に満開を迎えるカキツバタは名物。夏の緑陰、秋の紅葉、冬の雪景も見逃せません。
◆梅林(ばいりん)
1969年に北野天満宮、大宰府や湯島天神、水戸偕楽園など、全国の名梅を集めて造成された梅林。約20種、200本の梅が植えられ、3月になると紅白の花が美しく咲き誇ります。加賀・前田家の家紋といえば梅鉢紋、そして前田家は菅原道真を祖先としているため梅とは縁が深いのです。
◆時雨亭(しぐれてい)
5代当主・前田綱紀(つなのり)が兼六園を作庭した頃からあった園内の別荘。主に茶の湯に利用され、廃藩の後(明治初期)に取り壊されてしまいました。2000年に現在地に再現され、亭内の座敷での呈茶(有料)も楽しめ、オリジナル和菓子と煎茶や抹茶を味わいながら庭園を眺めることができます。
◆瓢池(ひさごいけ)
園内で最も古い時代に作庭されたといわれ、池の中程がくびれて瓢箪のような形をしていることから名付けられたそう。池の中島には六重に重ねられた「海石塔」が建ち、霞ヶ池から流れ出て瓢池に注ぎ込む「翠滝(みどりたき)」、池のほとりに1774年(安永3年)に建てられた園内最古の建物「夕顔亭(ゆうがおてい)」も見どころ。
◆噴水
藩政末期に造られた日本最古といわれる噴水。噴水より高い位置にある霞ヶ池を水源とし、池の水面との高低差を利用した自然の水圧で水が吹き上がっています。水の高さは通常約3.5m、霞ヶ池の水位の変化で変わります。
基本情報
兼六園
石川県金沢市兼六町1 TEL 076-234-3800(石川県金沢城・兼六園管理事務所)
[開園時間]
3/1~10/15 7:00~18:00
10/16~2/末日 8:00~17:00
[料金] 大人320円、小人(6歳~18歳未満)100円
※65歳以上、障がい者などは公的証明書の提示で入園無料
桜の名所「兼六園」と四季の無料開放&ライトアップ
兼六園は「さくら名所100選」(「日本さくらの会」選定)に県内で唯一選ばれているスポット。ソメイヨシノなど約400本の桜が園内を彩り、兼六園菊桜や兼六園熊谷といった貴重な桜もあります。園内のお花見スポット「花見橋」から見る曲水と桜、眺望台の付近が桜の名所として人気です。通常は入園料がかかりますが、桜の開花時期は無料開放されるのも嬉しいですね。
出入口の一つ「桂坂口」付近の茶店通りも、多くの桜が眺められる絶景スポット。食事、スイーツなどを楽しみながら花見をするのもいいですね。兼六園と金沢城公園に挟まれたお堀通りも、両側を桜に囲まれたトンネルのようで見事です。
また、兼六園と金沢城公園では、定期的に「金沢城・兼六園四季物語」と題して四季折々に夜間ライトアップが開催され、夜間開園時間帯は無料入園することができます。夜の兼六園は光の演出で昼とは違った表情を見せるので、昼の光景と見比べてダブルで楽しむのもいいですね!
こちらは観桜シーズンの「花見橋」から見た曲水の眺め。ここは季節ごとの花によっても雰囲気が変わり、夜のライトアップでさらにドラマチックな美しさに!
冬の兼六園も素敵です。今年の大雪が降った直後に訪れたときは、ライトアップされた唐崎松の雪吊りのシルエットが夜空と水面に浮かび上がる姿が壮観でしたよ! 初夏は曲水とカキツバタ、夏は蛍、秋は燃えるような紅葉と、どの季節も魅力的です。
兼六園が初めての方も、過去に訪れたことがある方も、季節ごとの風情があり、昼と夜で表情を変える兼六園を訪れてみてください。何度訪れても感動がある、それが日本三名園であり、日本の文化財指定庭園 特別名勝にも選ばれている兼六園です。
《兼六園 無料開園》
・12月31日〜1月3日までの年末年始(大晦日から元旦にかけては夜間も開放)
・観桜期の約1週間(開花の時期により毎年変動)
・金沢百万石まつりの3日間
・8月14日から16日までのお盆期間
・文化の日(毎年11月3日)
《金沢城・兼六園四季物語 2023年予定》
・観桜期:3月27日(月)~4月2日(日)
・春の段:5月3日(水・祝)~5月6日(土)
・初夏の段:6月3日(土)
・ホタル観賞会:6月30日(金)~7月1日(土)、7月7日(金)~8日(土)
・秋の段:9月30日(土)、10月7日(土)~8日(日)・14日(土)・21日(土)・28日(土)、11月3日(金・祝)~4日(土)・11日(土)・18日(土)・23日(木・祝)~25日(土)
・冬の段:2024年2月3日(土)・10日(土)・11日(日・祝)・17日(土)
※令和6年(2024年)能登半島地震の影響により冬の段は中止となります。
・北陸新幹線県内全線開業特別ライトアップ:2024年3月16日(土)・17日(日)