能登半島の商店街・一本杉通りで七尾の歴史と文化に触れる
ほっと石川旅ねっと体験ライターの又木です。
能登在住で、趣味の写真を通して能登の風景などを発信しています。
今回は能登半島・七尾市の600年もの歴史がある「一本杉通り」で、お抹茶挽き体験や幕末から伝わる婚礼文化の「花嫁のれん」、江戸時代から北前船の寄港地として栄えた七尾の和ろうそくなど、七尾の歴史や伝統と産業に触れてきました。
わずか450mの通りにぎゅっと詰め込まれた七尾の伝統と歴史の旅をお楽しみください!
全国でも珍しい!? 抹茶挽き体験
一本杉通りにある『お茶の北島屋』。以前書いた記事で金沢での茶文化に触れたこともあり、能登の茶文化にも触れたいと今回伺うことに決めました。
抹茶を点てる体験をできるところは多々ありますが、ここでは自分でお茶を挽いて点てていただく「抹茶挽き」ができると聞き、実際に体験してきました!
北島屋茶店は昭和8年創業の歴史ある茶屋。その建物は国登録有形文化財に認定されています。
北林さんは2代目。なぜ北林さんなのに『お茶の北島屋』なのか伺うと、ご先祖が石川県の美川地域から来られたそうで、その方がお茶の修行で島田屋というところに行っていたことから、茶屋を始める時に北林と島田を合わせて「北島」と名付けたそうです。
石臼を1時間回しても、できあがる抹茶の量は10人分。大変な作業です。
「そばなどの穀類はボールミルで挽いているけれど、抹茶だけは石臼で挽いています」と北林さん。この抹茶挽きができるのは全国でも珍しいようです。
北林さんは一本杉通りで「語り部」として地域の歴史や文化を伝える活動をされています。石臼にまつわる歴史をはじめとした様々な話を伺いながら、僕も抹茶挽きを行いました。
石臼に茶葉をいれ、反時計方向に回すと、石臼の周りに綺麗な黄緑色の抹茶の粉が溜まっていきます。
石臼を挽く際の音が松林に風が吹く時の音に似ていることから「松風(しょうふう)」と呼ばれるのだとか。
ほのかに香る抹茶と松風の音に、不思議と癒されます。
自分で挽いた抹茶を点てます。
金沢で抹茶の点て方を習ったこともあってか、北林さんに「上手やね」と褒めていただきました。(と言っても1回体験しただけですが…)
七尾の茶文化は茶道の作法を重んじる金沢に比べ、格式ばったところがあまりないのだそう。
抹茶挽き体験は平成17年頃から遊びの一つとして始めたそうで、こうした体験も七尾の親しみやすいお茶文化の一面なのかもしれませんね。
こちらは七尾銘菓の大豆飴に抹茶を振りかけたお菓子「ふりふり」(1袋500円)。
とても上品な甘さですごく美味しいです。抹茶と合わせても、単体でもおすすめ。
北林さんは、七尾の茶文化を多くの方に伝える他にも、ご自身の海外で仕事をしていた経験から英語を子供達に教えたり、一本杉通りの町会長もされていたりと地域の発展に尽力されてきました。
また、2023年には石川県内で国民文化祭が開催されますが、なんと能登演劇堂で行われる北前船を題材とした演劇にも出演されるとか。
ぜひ、お茶の北島屋でお茶文化と北林さんの話をお楽しみください。
基本情報
お茶の北島屋
【住所】石川県七尾市一本杉町54
【電話番号】0767-53-0003
【定休日】1/1〜3
【営業時間】9:00〜18:00
【駐車場】なし(お店横の御祓地区コミュニティセンター内駐車可)
《抹茶挽き体験》
【体験料金】700円(要予約)
【体験時間】約30分
『花嫁のれん館』で加賀藩の婚礼文化に触れる
加賀藩の領地であった能登・加賀・越中には「花嫁のれん」で嫁ぐ娘の幸せを願うという婚礼の風習があり、今日まで続いています。
そんな花嫁のれんについて知って触れることができる『花嫁のれん館』が2016年七尾市にオープンしました。名前についてはよく耳にしていましたが、北島屋茶店から徒歩で行ける場所にあり、せっかくの機会なので伺いました。
花嫁のれんとは字の如く、嫁入りの際に嫁ぎ先の仏間に掛けられ、花嫁がくぐる暖簾のことです。一生に一度だけ使われる婚礼道具ですが、様々な方が常時見られるようにと、『花嫁のれん館』が作られました。
ここでは、ガイドの方の説明をいただきながら花嫁のれんについての歴史や文化を知ることができます。
花嫁のれんについて知る中で、当時の様子や嫁ぐ娘へのご両親の気持ちを思うと、胸に込み上げるものがありました。というのも花嫁は嫁入りの際に、玄関で両家の水を合わせたものを盃に注いで飲み干し、二度と生家に戻らないという意味を込めてその場で盃を割るからです。
「今でこそ、結婚後に実家に帰ることは当たり前だけど、昔の結婚はとても覚悟のいるものだったんです」とガイドさんは話してくれました。
そうしたことから、花嫁のれんは”覚悟ののれん”とも言われるようです。嫁ぐ娘への親の気持ちが花嫁のれんには込められているのだなと感じ、胸がきゅっとなる思いがしました。
和室に展示されている花嫁のれんは、地元の方々から貸し出されたもので、約2ヶ月毎に入れ替えられるそうです。
写真ののれんは中能登町の方のもの。とても珍しいもので、「昭和23年のもの。富士山と松の木で無事を待つことを意味し、藻を刈っていることから儲かるという、大黒さんと恵比寿さんのおめでたい絵柄の花嫁のれんです」と話してくれました。
明治のものは、青や紫で主に木綿の素材が多く、のれんの枚数は3枚が主流だそう。
その後、絹を使ったものや家の間口の大きさによっては枚数が4〜5枚のものも作られるようになったそうです。
昭和になると綺麗な色や化学染料を用いて、絵柄も華やかなものが多くなるなど、時代とともに変化してきた花嫁のれんの特徴を見比べることができます。
※期間限定のため、内容が異なる場合があります。
館内のショップには、花嫁のれん館でしか買えないオリジナル商品や贈答向けの商品なども。
他にも観光情報や休憩スペースもあり、のんびりと館内をまわることができます。七尾に行く際には、ぜひ石川県内に根付く婚礼文化に触れてみてください!
基本情報
花嫁のれん館
【住所】石川県七尾市馬出町ツ部49番地
【電話番号】0767-53-8743
【定休日】年末年始(12月29日〜1月3日)
【営業時間】9:00〜17:00 (最終入館受付は16:30まで)
【駐車場】60台
【料金】入館料:大人(高校生以上) 550円、小中学生 250円、小学生未満無料、団体(20人以上) 450円
《花嫁のれんくぐり体験》 ※要予約
【料金】女性5,000円(白無垢または色打掛から1着)※2着の場合は7,000円、男性3,000円(紋付袴) ※入館料込
【所要時間】約1時間〜1時間半
【体験可能時間】9:00~、10:30〜、13:00~、14:30〜
北前船によって栄えた七尾市伝統の和ろうそくに触れる
1982年創業の『高澤ろうそく店』。建物は国登録有形文化財に認定されています。
七尾の和ろうそくは、植物の実などからとった蝋(ろう)を用い、和紙を芯に使った日本古来のろうそくです。植物油を使用しているためすすが出にくく、炎が大きく消えにくいといった特徴があります。炎を見ながらリラックスする時間を持つことも良いなぁと思い、伺いました!
今回お話を伺った高澤久社長。北陸では江戸時代からろうそくづくりを行っていたようですが、能登には材料がなく、蝋は九州から、芯に用いる和紙は島根県から北前船で運んでいたそうです。
というのも七尾湾は天然の良港とも呼ばれ、北前船の寄港地として繁栄。原料を全国から集め、七尾で作った和ろうそくが北前船によって全国へと運ばれました。
また、能登の人々の信仰心は篤く、仏事や祭りなどでも和ろうそくが頻繁に用いられてきたそうです。
実際にろうそくに火を灯していただきました。炎が大きく、優しいオレンジとゆらゆら燃える様子になんだかほっとします。
「火の良さを知ってほしいです。」と高澤社長。ろうそくは、食事の際にテーブルを囲む時の雰囲気作りや、仕事の後リラックスしたい時などに使う方も増えているのだとか。洋風のキャンドルと違って炎が大きいことも和ろうそくの魅力の1つです。
和ろうそくについて以前から知ってはいましたが、実際に触れたのは初めてでした。
北前船によって和ろうそくが栄え、それが能登の人たちの暮らしに合っていたという歴史のつながり、そして、自然の恵みを上手く商品に取り入れ、資源を循環していく里山保全の取り組みは大変興味深かったです。ろうそくそのものの魅力も実感しました。
炎に魅せられ漆ろうそくを購入。早速、家でも寝る前に灯りをともし、お茶をいただいています。ぜひ皆さんも七尾に行き、伝統の和ろうそくに触れてみてください。ろうそくの灯がいつもと違った時間を彩ってくれますよ。