能登の里山里海 - 空港以北 -
能登の里山里海は、新潟県佐渡市とともに日本で初めて世界農業遺産として認定されました。能登の伝統的な農村文化や描き出されたノスタルジックな景観、この地で営まれる農業や漁業とそれに寄り添う能登人。奥能登と呼ばれる地域には、懐かしくて優しいニッポンの原風景が、いまも穏やかに佇んでいます。
白米千枚田
輪島市白米町にある白米千枚田。海に面した斜面に1004枚もの小さな田が連なる棚田は、世界農業遺産に認められた能登を代表する景勝地です。美しい棚田の風景は、斜面の上から見下ろして絶景を堪能したり、斜面を下って棚田の中の遊歩道を散策したり、隣接する道の駅でご当地グルメを味わいながら寛いだりと楽しみ方もいろいろです。 春は水を湛えて空を映し、夏は青々とした稲を育て、秋は黄金色の稲穂が頭を垂れ、刈り取られた稲がはざに干される。四季折々に異なる風景を描く棚田は、2024年の地震で甚大な被害を受けましたが、たくさんのボランティアに助けられながら、少しずつ元の姿を取り戻しつつあります。
奥能登 はさ干しの景色
刈り取った稲の束をはざ木にかけて天日に干す。能登で昔から続けられている稲の乾燥方法です。眼の前に広がる海の近くで高さ3〜5メートルの木組みをこしらえ、刈り取った稲の束を丹念に掛けていく。その仕事はすべてが手間暇のかかる手作業です。手刈りされた稲は葉や茎に残った養分も米粒へと還元され、米の旨味、甘味、色艶に違いが出ると言われています。大型機械の入らない棚田や小さな手作りの田んぼが点在する能登には、ノスタルジックな家並みと見事に調和するはざ干しの風景が残り続けています。
奥能登の塩田群
珠洲の外浦には、砂を敷き詰めた塩田に海水をまき、天日で乾燥させる「揚げ浜式製塩」が点在しています。それは400年以上続く奥能登の伝統的な塩作りの風景です。塩が乾くようになる4月の終わり頃から10月の中頃まで、美しい海に寄り添いながら、過酷な自然と対峙して塩作りに励む浜士の姿を見ることが出来ます。絶景の仁江海岸で塩作りを受け継ぐ道の駅すず塩田村では、塩づくりの歴史が学べる塩の総合資料館もあり、立寄りには最適です。能登半島地震では、塩田にもひびが入るなど大きな被害を受け、隆起した海底が海を遠ざけ、塩作りにも大きな影響を与えました。塩田業を営む殆どの事業者が、いまはその復興に向けてチャレンジしています。
五色ヶ浜
朝から夕方の間に海の色が五色に変わるとされる美しい砂浜、内海に面し、波が穏やかな2つの小さな入り江が弧を描き、透明度の高い海が印象的です。高台に足を運んで浜を望めば、その造形の美しさに見惚れるばかり。天候によっては、海の向こうに立山連峰が姿を現し、幻想的な風景を造り出します。 遠浅で砂地の浜は、夏になる小さな子どもたちも安心して楽しめる海水浴場となります。地震の影響で駐車場に亀裂が入るなどの被害が確認されましたが、同年7月上旬までに修復を完了し、奥能登で唯一海開きをした海水浴場となりまし た。
イカの町能登小木港
集魚灯を湛えた大きな漁船が佇む能登小木港。小木の町は、能登半島の北東部に位置する人口2,500人ほどの小さな港町ですが、青森県の八戸港、北海道の函館港と並ぶ「日本三大イカ釣り漁港」に数えられます。6月〜12月、南は島根の沖合から北は北海道の稚内まで、スルメイカを追って遠洋漁業に繰り出す大型漁船は、能登小木港で見ることができます。 さらに小木では、季節のイカを能登沖で獲る近海漁業も行っています。こちらの漁は小型船で繰り出し、能登沖の水平線には漁火を灯します。小型船は漁村近くの船着き場に連ねられ、能登らしい風景を醸しています。